11/15 桟虚殿のバンド「オブキュウ」のライブ。

直前まで悩んだが、やはり車で行くことを決意した痲酔は
三軒茶屋という場所柄か、駐車場が解らない。
そもそも東京下町江戸月島生まれの痲酔は
こちらの方はよく分からない。近隣の下北に至っては
静岡県静岡市の次ぐらいに苦手な街だ。
「山の手の下町」という匂いがどうも好かん。
そのアレルギッシュな状況も相まってかなり苛だち気味に
クラクラしながら、迷子のように彷徨い、息絶え絶えの果てに
そのライブハウスは蜃気楼の様に存在していた。
ヘブンズ。牛角の地下。ああ牛角も好きじゃない。
うちの親父曰く「牛角の肉は四角いからきれえだ」という理由なのか
定かではないが、どうも好きじゃない。
牛角なら安楽死邸のが好きだ。
さてそこまで生死の狭間を彷徨った痲酔ちゃんが会場入りすると、
グッズ売り場で三上殿(オブキュウの方)が軽く陣取り、
女の子をくどき倒し、その横には桟虚殿。さわら殿が痲酔に駆け寄り
織姉に至っては何処にいるか解らない。編み上げブーツが足に食い込む。
何だか今日は雰囲気が違う。どうも暑い。
とりあえず三上殿と話そうと思ったら、何故だかみんな何処かへ行って
しまって、放置プレーの刑に処せられた痲酔ちゃん。どうしたんだ?
と思っている痲酔の片手にはラムコーク。三上氏も今やってるバンドに
耐えられなかったのか、会場(客席)を走り回った末に
出ていってしまう。まあ気持ちは分かるけど。
かっこいい音楽なんだけど、ボーカルがパンキッシュな歌い方で
暑苦しい。パンクはもっと暑苦しくない方が好きよ。
更にオブキュウのライブは客を放置プレーするのがいいのに
客にもっとのってくれとそのバンドの人は強烈アピール。
お客さんがひきまくっていたのが、手に取るように解る。
みんなが外に出てってしまったので、あまりにも暇で隣に座る女性と
トーク。噛み合わず遠い目で流離いの自称放置プレーが似合う男No.1
ぶりを発揮。ともするとその押しつけがましいバンドの皆さんの演奏
が終演の時に至る。一寸した静けさを楽しむ為に目を閉じるつもりが
眠る。騒がしい中で眠るのは大のお気に入りだ。
やがてその音楽はおいらの耳に静かに囁いている。
いよいよこの沢山の苛立ちから開放される瞬間がやってくる。
痲酔は日頃さほど苛々しない。別においらを苛立たせる出来事が
少ないからに他ならない。しかし、何故だかオブキュウのライブが
近づくと、神様からオブキュウモードの指令が来たかのように
驚愕の事実がおいらの胸を締め付ける。試練だ。
しかしこの開放の瞬間痲酔は勃起する。
最近は朝立ちすらままならない痲酔が間違いなく勃起する。
耳元で囁かれるその調べはおいらを包み、客の暑苦しくない対応に
更に我が輩を加速させる。
目を開くときっと死の淵で見える走馬燈に登場する女神の様に
容赦なく桟虚殿は光の中に包まれ、会場をその走馬燈で包んでいる。
過酷な労働の果てに、一歩工場の中から出ると神々しく演説を
繰り返す第三世界の総統のように。
いつもはただそれだけだが今回は雰囲気がやや違う。
何となくいつもよりも全体のノリがアップだ。
まさに浮ついている客。しかしそんなものはオブキュウが沈めてしまう。
鎮火だ。猛々しい炎なんて、焼き肉でも焼いて喰ってろとでも
いわんばかりに辺りが静寂に落ち着いていく。
流れる緩やかな空気感、激しかったはずの業火に曝された臣民の汗の
仄かな薫り。う〜ん。実に溜まらない恍惚感。
すっかりご満悦・・・いやすっかり落ち着いた痲酔ちゃんはそのまま
焼き肉へ。牛角はダメだよ。気分を害す。デザートは旨いけど、
このさえデザートはいらないから。(勿論食べたけど)
オブキュウでニュートラルになった痲酔は焼き肉に燃え、
今日一日を終えるのであった。
焼き肉屋でおいらの顔見て笑ってる奴がいらあ。気持ちいいね。
帰りがけに買った珈琲のせいで駐車料金で使うはずの小銭がタリネエ
そんなのぐらいで苛々するかい。
いよいよ始まった初冬の深夜。車は家路を走る。

この後オブキュウは解散しました(涙)