蟲対談「蟲籠」第三回 桟虚@iyaca

収録日4月4日(有楽町「ロイヤルキャフェテリア東京国際フォーラム店http://r.gnavi.co.jp/g183401/」)

痲酔(以下M) 桟虚さん誕生日おめでとう御座います
桟虚@iyaca(以下S) ありがとう。なんかさ。(掲示板に)書き込みがあって。(桟虚@iyacaと)エンドさんと旦那さんと誕生日が続いているんだけど、エンドさんに一日早く書き込みされちゃって、それを見てふるるが「おめでとうございます」って書き込んで・・・結局あたしの誕生日がいつなのか、解らなくなってた(笑)超受けたんだけど

今日4月4日は桟虚@iyaca生誕の日である。というわけで行われた蟲対談改め蟲籠。遂に第三回を数える。

S 今日たまたま誕生日だし、3番目だし
M 3番目が好きなの?
S 桟虚だから。
M ああそうか
S よく遊んでるから話すこと無いよ。
M でもいつも喋ってることを喋ればいいジャン
S (対談の)予定が(たくさん)入ってても追いつめられないんだ
M え?
S あたしは予定がちゃんと入ってると追いつめられちゃうの
M でもそこまでかっちりした予定じゃないから。
S 今日(対談を)パスしたら(バースデイ)ケーキ喰って寝るだけだから、やだったの。でももし桟ちゃんが喋れなくても痲酔ちゃんが喋るからいいかってのと、筆談って手があるかって思ったの(笑)

当日桟虚@iyacaは体調が優れず、特に咳が非道く、会話もままならないほどであったが無理を言って足を運んで貰った。思えば人生とは不思議なものだ。単刀直入に書くと私事で申し訳ないが、桟虚@iyacaは私にとって“人生の先生”である。教祖といっても過言ではないと思っている。大袈裟に聞こえるのを承知で噺を進めたい。場所は有楽町はロイヤルキャフェテリア東京国際フォーラム店。我々二人はそれぞれマロントルテと抹茶ミルクトルテと珈琲を注文。

S ケーキはシブーストが一番好き。
M シブーストって?
S 上にゼリーみたいな感じが乗ってて。
M ああ、何となく解ってきた。
S (抹茶ミルクトルテに乗っている)餡のような羊羹がね、美味しいよ。
M 意外にあっさりしてるんだね。重くないね。
S 珈琲も美味しい
M 珈琲はロイヤルホスト(と同じ)だからね。

桟虚@iyacaと私は共通点が多い。例えば、お互い実年齢よりも若く見られる。羨ましがられるが、当人にとってはメリットも多いがデメリットも少なくない。こと社会で仕事に着手すれば、当然重くのしかかる問題である。社会との接し方にバランスをとる必要があるのは誰もが同様であるが、その手段をわたしは桟虚@iyacaから学ぶことが多い。率直に言えば見た目の若年齢を逆手にとって武器にする。また趣向が近いというのも共通点であるかも知れない。彼女が好む芸術・芸能は大抵私の生理に合っている。その手の信頼もあり、彼女を師と仰いでいる。とは言うものの桟虚@iyacaは歌姫だ。その歌でたくさんの人間を救ってきている。そういった部分では三上言うところのフックを多大に兼ね備えており私なんぞ、まだまだであるし、私は歌手ではないから、そういった形式上の師匠というわけではない。

M この前のライブ(loopline)のあとはしばらくなにかやんないの?
S レコーディングやってって言われたけど、相手の人が今準備してたりとか。
M ああそうなんだ。
S あのイベントには何らかの形でどっかで謳うと思うけど・・・ただ主催者の彼が凄い成長しててかっこよくなってた。
M ああ、主催者の人がオブキュウのサポートだったという?
S そう。サポートっていうかマネージャー兼でみたいな。彼には凄く人が集まるね。面白いことも格好いいこともやってたし、精力的だけどがっついた感じが全然なく凄い成長しててかっこよくなってたね。圧倒的にほんとに同じようなことやってても集まる人と集まらない人、決定的に別れちゃうね。
M そうだね。でも集まらない人のがいいって人もいるでしょ?
S 居るの?
M いるでしょ。色んな人がいるんだし。色んな考えがあるんだからさ。
S そっか。この前のイベントは『ラップトップ』といってパソコンをぽんぽんとやる奴でさ。ヴォーカルとか入るイベントじゃないからさ。
M “音響系”のってことでしょ?
S そうだね。だからあたしは(ボーカルだから)浮いてたけど・・・
M そっちのが「バンドだ!」、「ロックだ!」とかよりも桟虚さんに合ってるよ。
S ホントにロックとかあたし合ってないね(笑)
M 一般的にライブハウスだと客がボーカルをがっと視線が集まってという空間が出来ちゃう。更にそれによってバンドと客による見事に対話になってるのを理想としている。確かに桟虚さんもちゃんとそういう状態を産んでるんだけど最終的に桟ちゃんが全部呑んじゃうからね。だったら別に最初から対話しようという空気とかじゃなくてもいいんじゃねえかと思う。ライブハウスという場所が不向きだと思うね。補足すれば桟虚ワールドに静かに浸透した方がこっちはありがたい。
S 練習だといい時はいいバランスなんだけど、やっぱり人間って変わっちゃうね。ライブだと変わっちゃう。力んじゃうのか、伝えなきゃとか思っちゃうのかな?
M そういうのは解りますよ。ライブハウスとかってそういう場所な気がしちゃう。腕力勝負みたいな。めだってなんぼみたいな。そうじゃないイベントもあるんだろうけど・・・最初の頃のオブキュウが出演してたイベントは凄く良かったけど、解散間近の頃のパンクバンドとかと一緒のライブだとは良さが出ない。そういうライブの客は対話を求めてしまうから。
S なんかつれてこられたみたいな(笑)
M うん。桟ちゃんのパンチで保ってるけどもやっぱり苦しかった。
S アンビエントとかは(ライブより)イベントがメインだよ。この前のイベントなんかは情報交換会みたいな感じだった。
あたしは曲が出来てアレンジして貰ってなんぼなんだけど。「どうやってこの音を作ったか?」とか生き生きした目で話してた。「構成は良かったけど何とか音がもうちょっと前に出ると・・」みたいな会話をしてた。でもなんかしらあたしも絡ませて貰えるみたいだから
M 良かったね。
S あたしボーカル用のエフェクターとか持ってたから良かったけど何もないカフェでやったからさ。普通のボーカルは持ってないからね。
M おいら劇場とかライブハウスとか仰々しくてあんまり得意じゃないのですよ。例えば駅のちょっとしたエリアに飾ってある絵とか見て日常から脱却できるという効果があればそっちのが素敵だと思うし、わざわざ閉じこもって非日常を演出するのはあんまり好きじゃない。
S 歌はね。あたし無理矢理メタルとか謳わされていた時期があって、その時のビデオがあってステージング格好いいよ。ダンスやってたからさ
M そういうのは感じるよね。グルーブ感とか感じるし。
S ホントに?でもあたしは“こう謳いたい”ってのに集中してるのね。流石に凄いキャラの人が客席に居たらそっちに意識持ってかれちゃうけど(笑)
M 所謂ステージングとか、構成力で演ってる人とは違うことやってるのに永年かけて培われたなんかがあるんじゃないですかね?まあパーソナリティとかもあるだろうがね
S ほぼパーソナリティだけなんじゃないかって思うけどね。
M (笑)歌とか声とかじゃなくて?
S キャラって言うか、立ってる姿を見たいから来てるんじゃないのかな?
M “ミサ”チックだよね。
S 宗教っぽい?
M まあ“教え”とかがあるわけじゃないから宗教とは違うんだろうけど
S 結構音楽解んない人が来てくれるから
M 解りにくいことやってるようでもそういう意味では結果的に解りやすいんだね。
S 心地よかったりすればいいんだろうから
M 形態とはなんだっていいんだろうね。個人的には抽象的だが音楽は解らないから、自分の基準で見てる。よく判りますよ。自分の求めているモノを出てれば心地良いからね。恐らく桟虚さんの立ち姿を見にきてる人にとって内容よりも何よりもそっちがエンターテイメントなんだろうしだからそれがパーソナリティのが重要ってことなんだね。
S 友達が「桟虚の曲は暗いし変拍子だし、何だか解らないけど、謳ってる姿が好きだからライブに行く」って言ってた。
M 逆に桟虚さんだから見に来るんだからやりたいことやった方がいいんですよ(笑)。それは羨ましいことですよ。
S 音楽をやってて思うのは2,3回ライブやって、客が来なくて凹んでる人がいる。全く意味が分からない。あたしは自分のやりたい音楽をやっていくだけであって、そりゃお客さんがたくさん来た方が当然嬉しいけど、最悪誰もいなくてもPAさんがいるじゃん。今回の曲は良いから客は居ないけど、是非聴いてくれ!って感じだよ。自分がやってることが好きで、自信もありながら試行錯誤を繰り返して、動員なんて最後に考えればいいんじゃないの?一年くらいやってから考えればいいよ。
M そりゃそうだ。おいらはめんどくさがりやで「解る奴だけ見ればいいよ」って思ってるだけなのかもしれないけどさ。どっかそういう感じがあるだろう。共感や理解があるのもいいし、見たいから見たいでもいいしってことだろうな。そう簡単に共感なんてないよね。でも其処までなかなか辿り着かないんですよ。なかなか。桟虚さんは割と毎回いきなり“暗い”とかでも評価が来るじゃない。そのテーブルに着くのになかなか時間がかかるのがジレンマなんですよ。今考えるとオブキュウは凄いバンドでしたよ。
S う〜ん・・・
M いや、だから裏話は色々聞いてるけどね、それよりも舞台に出てるときの不安定さというか纏まってる感じなのに
もの凄く偶発的な感じが良かったね。
S この前やったLOOPLINEの時も色々アクシデントがあってね。あたし自分はぬるま湯に浸かってると唄えなく成っちゃうから困った感じ、こんなのどうやって謳うの?って方が謳えるのね。桟ちゃん唄えないかもしれないけど頑張ろう」みたいな

●桟虚@iyacaは最近着メロに凝っているらしい・・・・

M (サイト名が)火星なんちゃら牧場(正しくは「ポケット効果音」ってサイトの中の音の名前)なんだ。
S そう。音解る?
M それがギューニューキャップの音なんだ
S これはまた違うんだけど。これは体長30cmのアメーバーが移動する音なんだって。アンビエントとかバリバリ使ってて。これで桟ちゃん作曲出来るじゃん。遊んでたんですよ。全然ダウンロートとかしてなかったんだよ
M それはJフォンの公式コンテンツなの?
S そう。
M 勝手サイトではなくて?
S そう。このサイト、スイッチ音がいっぱいあってさ
M スイッチ音って、携帯のボタン押すと鳴る音でしょ?
S とか宇宙船のドアが開く音とか、何とかってロボットが歩く音とか、不機嫌なロボットが嫌々返事をする音とか。あと犬の鳴き声とかもあってブルテリアの鳴き声を落としたら、くうーとか入ってて感動なんだよね。
M そう言う着信音は作ってるのかね?
S 桟ちゃんこれで暫く遊べるジャンって思ってね(笑) 携帯見た目が飽きちゃって外観を変えたいんだよね。あたし自分で出来るわけがないんで。でも頼むと結構高いしね。

最後に
S この前ジーコ内山さんの「乙女の祈りショー」のイベント行ったら、其処に出てたボーカルの人に「この前歌良かったです。」って言われて。「?」って思ったし、こんなありきたりな顔何処でも居ますよって思ったんだけど、実はLOOPLINEの時見に来てくれたらしいの。桟ちゃんプロの人に誉められたって感動した。
M 凄いな・・・前から凄いなって想ってるけど
S 普通にたんたん月並みな暮らししてるだけなのに刺激が・・・茶柱立った感覚って言うのかな。感動。
M なんか桟虚さんはそういうのありますね。桟虚さんがいい思ってる人にいいって言われるのは凄いね。おいらには少ないからな。だから一人になってしまったんだけど
S 桟ちゃんは痲酔ちゃんいいって思ってるよ。
M でも桟虚さんだって、「この人ナルシストだから合わないだろうな」って先入観で思ってたんでしょ?なんかおいらがそういうオーラみたいなの出してるんだろうなってさ。だから巧く行かないんだ。そこんところ桟虚さんは桟虚さんが「凄いな」って思ってる人に凄いって言われてる気がするよね。
S 言われるね。うん。多いね。
M でもそうなると傾倒というか、偏ってしまう気がするんだけど、桟虚さんはそんなことない。
S 偏るって?
M そういうことがあると、そっちにどっぷりいくと思うのですよ。
S 単に多趣味だからじゃないの?
M まあ複合的な理由があるんだろうけど、そのバランスの取り方って凄いね。日記読んでても喋りと書き方がおんなじだもん。

この会話だけで充分だ。所詮人間の生理は説明しずらい。私は人生のあらゆるターニングポイントを桟虚に話すことにしている。
お袋が死んだ晩に夜分に迷惑ながら彼女に電話した。会話の内容は忘れたが、とてもほっとした。そう記憶している。確かに説法はない。しかし言葉では説明できない癒しが其処にはある。その癒しこそが説法となり、人によっては彼女の歌声や立ち姿によって、人によっては何気ない会話から癒される。ジャンルとしても宗教ではないのかもしれないが、そこに癒しを求め、得られるという状況だけで人間は生きていける。それが宗教でなくてなんだというのだろう。かつて桟虚@iyacaと二人で足を運んだ丁度場所も同じ東京国際フォーラムにて、村上保さんの彫刻の個展を鑑賞した際、村上氏は「芸術と宗教の違い」について、下記の如く述べられていた。
「宗教は追求していくとどんどんマクロになるが、芸術はどんどんミクロになる。」
何気ない日常の救済やエッセンスとして発動されるのは同様なれど、芸術は宇宙やら世界やらに行き着くのではなく、もっともっとミクロな人間の内面だとかに辿り着くのだと言う。しかし桟虚@iyacaの製作はあくまで芸術の手法で進行しているにもかかわらず、その背後や端々に世界や宇宙が見え隠れする。ミクロを描いているとその先にマクロが登場する・・・いやマクロなエッセンスが顔を出している。
だから私は彼女に呆れられようと彼女の声を聞かずにはいられないのである。

蟲籠について→http://d.hatena.ne.jp/virusdust/20040319

蟲ポオタル→http://www.virusdust.net/