下妻物語

下妻物語 スタンダード・エディション [DVD]
どうやら人間という動物は不安定な精神というモノを持ち合わせており
だからまあ、形式的に安定を望むらしい。
現代社会の日本の如く
マイカーを持てば好きなところに行けるし
海外だって手続きすれば行けちまうし
飽食で、餓死はなく
犯罪しても死刑は少ない
事故も國のせいに出来ちゃうし、
そこそこの平凡な経済状態ならば
仕事以外で人に関わる必要もないのだから
まあ何というか
不安定である必要はないのだが、安定しない。
しかしことによると自己完結という名の安定を獲得し
自由を勝ち得たかに見える手合いも見える。
仲間はずれなんて何の其の、職場にいても
別段家に帰れば理想郷があるのだから気にしない。
気概なんざ持たない。大切な物なんてないし
第一義と定義づける程のモノは存在しない。
生きる意味など問わない。
そんな人間がうっかり玉の輿に乗って
経済的に裕福になっても
相手の気持ちも考えず生きていけたら
もしかすると他の生物の如く安定を手に入れることが出来るかも知れない
しかし其処は人間
周囲は不安定の塊だから、そんな手合いは許さない。
安定をこぞって付け狙い
長くは続かないであろう。
理屈では此程安定している自己完結も
生命体の基本的な存在意義を守り通すことは難しくなる。
種を保存していくという作業に関わる以上
自己完結だけでは巧く行っている例にわたしは出会ったことがない。
シングルマザーの中にだって恐らくいまい。
しかしその反面もの凄い量的に膨大な情報が飛び交い
その取捨選択を常に迫られている現代において
自分に余り関わりのない問題はさておき
自己基準が必要となる。
自己完結は駄目でも流されていては収拾がつかない
「これが好き。あれが好き」
というほどの明確性はなくとも
「これはいや。あれはいや」
程度はあるだろう。本能的、生理的な嫌悪感は誰でも持ち合わせている。
でなけりゃ生きてないでしょうな
つまりバランスだろう。
この度の下妻物語
落げと枕の歯切れの悪さを除けば、実に面白かった。
内容がとても解りやすいし、キャラクターも突飛してるのだから
枕はいらないのではないかと思うのだけど・・・・
落げもぽんと切ってしまって差し支えなかろうに・・・
まあそれはいいや
私は基本的に「これがいい。あれがいい。」という部類の自己基準を
持っていきたいし、持っていると自負しているから
「厭だ」は割愛することにする
さてストーリーはこれまた単純で好き。
自己完結してる全身BABY, THE STARS SHINE BRIGHTづくめのロリータと都会では絶滅したレディースの友情物語
場所は下妻
上野から出てる常磐線の先にある常総線というJRの駅である
ちなみに下妻まで代官山から2時間半かかるという。
下妻の田園にてロリータが闊歩する姿は非常に興味深い。
とそれだけの噺。
主題は友情話だから当然自己完結なロリータもそのままじゃまずいとなり
レディースも社会というどでかい組織に対抗する初期衝動を忘れ屯しておんなじように組織を作り
自己基準すら失い欠けた己を自己完結ロリータを見て
自戒するというだけ。
しかしこの単純明快なストーリーやテーマが我々の現代人にとって最も目を伏せることが出来ない問題なのである。
物理的に関わりを最小限にくい止め自分の世界だけで暮らしていけるはずの現代人なのに
人間関係がもっとも社会を抑圧する問題なのは矛盾のようだが
ご存じの通り、「だからこそ」なのである。
これが貧困で手と手を携えて生きている社会なら
否応なく仲良くしなくては成らないし、自己基準なんてわがままであろうから
問題も起きにくいのではないか?
誰が一番偉いかも解らず、誰が一番かっこいいかも解らず・・・などなどという全体的な基準が喪失している“なあなあ”主義だからこその苦悩であろう。
更にどうせ苦悩の連続なら、苦悩と葛藤のその隙間は出来りゃ面白い方が良い
もっといえばアッパラパーで生きたい。
理屈っぽいのは困ってしまう。
わたしはそんな風に思い、生活しているし
本作はそんな風に作られていたように見えた。

http://www.shimotsuma-movie.jp/