蟲対談「蟲籠」第陸回 a2c

収録日5月31日(恵比寿駅ビルアトレ4F「LEAVES cafe - 恵比寿 -」http://www.mikishoji.co.jp/leavescafe/index.html

 随分水を空けてしまったが、実際にこの対談を収録したのは前回のゆりの会から数えて一月後。前日に二子多摩川でa2cが参加するユニット「ブティック」のライブがあった。つまり5月末日収録の本対談。更新が遅れて申し訳ない。関係者の皆さんに陳謝いたします。
さて再開された蟲対談「蟲籠」。この度はa2cの登場である。わたしとa2cの共通点は駄目人間という一語に尽きるであろう。本対談は音楽人としてのa2c…つまり二つのユニットを掛け持つ彼の魅力に迫ろうと当初考えていたが、やはり水というモノは高いところから秘低いところに流れるというモノでして…案の定、いや予想に反して、業、欲、駄目についての語らいが中心となった。

★ネット人間
我々二人はネットを介して知り合った。見た目はお互い“現代っ子”であるから、そりゃ当然の如くPCを使う。しかも仕事でも使ってるんだから、まあ現代人の嗜み程度にはITを利用している。しかし元来アナログな二人はどうもハードにはなじめてもソフトとなるとちょいと異なった思考で接している様に思う。そこら辺に触れてみた。
a2c(以下A) 俺ネット駄目なんだよね。この前の絵茶、チャット初体験だし・・・
痲酔(以下M)おいらもネット大丈夫人間だと思われがちなんだよ。
A 俺おたくが苦手だからさ。高校の同級生がみんなおたくだったから・・・
M 一緒だな。おいらと。トラウマだね。
A 友達が絵に描いたようなおたくだったのよ。
M エピソードとしてはね。池袋の近くの「まんがの森」ってところに連れて行かれて、みんな漫画あさってるんだけど、おいら暇だし、ガキだからエロ漫画読んでたの。そしたら友人一同集まってきて「痲酔君そういうのおたくっていうんだよ」ってさ(笑)
A それはショックだね。
M いやショックってよりもさ。ガキなんだし、エロ漫画読んでる方が健全なんじゃねえの?(笑)
A(笑)おたくが厭だったわけじゃないんだけど。かっこいいのが好きだったからさ。ロックンロールに目覚めて、普通にし始めたら普通に友達ができ始めた。普通にしてれば、友達出来るんだなあってね。
M おいらはクラスに友達いなくなったけど(笑)。でもさ。その辺が問題だよな。センスっていうか・・・なんていうか・・・
A おたくにも2タイプ居ると思うのね。
M「これがいい」って選んでる人と、消去法で「これいや、これいや」って言ってる人ってことね。要はバランス感覚ってことだよね。
A 相対的に在る物事を語ってくれればいいけどね。バランス崩れてるのも面白いけどね(笑)崩し方もあるけどね
M とれてる人ととれてない人だったら、とれてる人のが面白いよね。
A 自己完結してると面白くないよ。遊びの部分を色んな形にしてることによって面白さを見いだせる。
M まあ自己完結が凄すぎて、こっちが多大な負担をしいただけの価値があればオッケーだよ。そうじゃないんだったらある程度エンタメを考えて貰えると有難いね(笑)。

お互い良く言えば美意識に重きを置いているとも云える。まあ良く言えばだけども…さて続いてはじょにいの噺。a2cにとってじょにいは幼友達であり、嘗て一緒にバンドを組んでいたこともあるマブダチである。そこで、まあ聞いてみた。

★スター人間
A この前加納おりえに聞いたんだけどじょにいの夢は凄いね。彼はスターになりたいんだって(笑)?
M いいね〔笑)。
A 本人から聞いたわけじゃないんだけど、要約するとスターになりたいのかなあって。
M つまり派手で、周囲の人がみんな笑ってる世界だね。しかし或る意味彼は逆行ってるよね(笑)でもおいらじょにい好きなんだ。
A いないよね。スターに成りたい奴って。そこら辺が奴が面白いとこだよね。
M 一度も思ったことがない。洒落で言ったことはあるかもしれないけど。
A (じょにいは)その割には何もしてない。
M 彼の場合、大いなる一歩踏み出すところからスターでなくてはならないんだから、それは難しいよ。
A そうね。ジャンルがあってだもんね。で、売れてスターだもんね。
M アナログっていうか、昔気質な人間なのに資本主義的な成功を望んでいるから矛盾が生じるんだろうね。
A なるほどね。

二人ともじょにいが好きであるが故の噺であろうね。さて、いよいよ噺は本編に突入します。

★駄目人間
A 日本はいいねえ
M いいよ。例えばさ。海外の神様は人型だけど、日本のは山とか木とか生殖器とか、人型じゃないんだもん。江戸時代は神も仏もカオスだもん。
A 時代小説を読むと、信心はレジャー感覚だよね。
M 千社札も凄い。だってスタンプラリーの逆だよ。置いてきちゃうんだ。印刷技術の発展してない時代に金かけて作ったもの置いてきちゃうんだもん。更にどうやったら目立つか、になるんだもの。
A そっかなんか暴走族とかもそういう意味では日本的でいいね。
M 発想的にはナチュラルなんだと思うよ。日本は全体的にはキュートだと思う。
A ああ。
M 例えばバブル期だけでしょ?専業主婦神話は。その前は農業国だから働いてただろう。
A 貞淑なってのも、明治国家がこさえたモラルでしょう?
M生娘って思想があるけど、日本の場合拡大解釈で結婚してないって意味だしね。不倫て言葉が流行ってたけど、昔から日本はその文化を背負ってきただろうし。拡大解釈が好きだよね。
A 夜這い文化だからね。
M ね
A 結婚前に色々試した方が後のトラブル少なそうだしね。
M 割とそんな感じなんだよね。あんまり貞淑なんて合わないしね。
A その文化が入ってくるのには色々とあったんだろうけど、向こうはキリスト教国家だしね。色々違うんだよ。秘められた感じがあるんじゃん。
M 日本はいいねえ。ほかのアジア諸国が本気出したら勝てないだろうね。だからこそ。日本人には駄目な事を肯定して欲しい。それじゃあ資本論や民主主義は成立しませんっていうならしょうがないけどさ。頭悪いからわかんないけどさ。
A (資本主義も共産主義も)どっちにしろ、「みんな一緒なんですよ」ってのはね。どうなんだろうね。あり得ないわけなんですよ。
M 人間は駄目で業深いから「あいつ働いてないのに俺ばっかり働いてるんだ」ってなるだろうと。欲深いわけだし。
A 欲ね欲。欲ってどこから出てくるんだろう?ってのもあるね。楽しい
M 実際の欲望ってのを形式的に形にして、芸能や芸術にして見て楽しんでいるが、実際の欲望を見て楽しめるまでは行ってないよね。
A それが面白いよね。
M 他人の不幸は蜜の味ってのとは違うけどもね。今後どうなるのか楽しみだなあ。アニメを見てると日本って社会を描く上では凄く成功してるなって思う。面白いもん。
A 欲を解消させますよね。必要な装置ですよね。買い物が好きな人間は買い物して現実社会を満たすわけでしょう。現実社会が満たされない人間が仮想現実として自分が生きてく場所を見出す為の装置。風俗と一緒ですよね。現実社会で女とやれない人が行く
M プロのが良いって仰る方もいらっしゃいますがね(笑)
A そういう意味では頭の中で現実社会で見出せない部分の反対の錘としてのバーチャル・・・
Mバランスなんだよね。よくあるじゃん。学校の先生が痴漢するとか、日ごろ温厚なやつが切れたり、いつも怒鳴ってる人が妙にやさしいとか。どっかでバランスとってるんだよね。自己完結ではなくバランスとってる人が優しいのかなって。
A 反対の錘が病気の人もいるし、薬の人もいるし、バランスとらないと死んじゃうから。
Mおいらも精神的にカナリ弱い。でもね先週、熱が出たの。そしたら安定するんだよね。面白いなって。
A それは気持ちが?
M そう。「しょうがないよ。おいら熱があるんだから」ってなるのかなんなのか?わかんないんだけどね。
A (笑)それはまた業が深い話ですよね。体の調子がいいんだからいいじゃんってならないんだ。まあ負荷があると安心するよね。
M ちょっと論理だけじゃ説明できない。そういうのがなかったら論理だけで良いだろうね。生命があるプログラムにしたがったものならば人間とはとても性能の低い生き物だよね。(笑)
A こういう余計なことはしないですよね。こういう余計な事ってのは生き物的にはどういうプログラムなんですかね?
M わからないね。あのさ。化け物ってさ。狸か狐だよね。
A そうですね。
M 鰐や熊とか人間がかなわなそうな相手は化けないよね。あれって人間の過信なんじゃないかなってどっかで見聞きしたのね。
A へえ。過信?
M あの程度が化けても怖くないが、あいつらに化けられたらたまらない?ってことなんだろうか…
A 化けるって最終手段なんでしょうね。勝てない相手に化けて勝つ為の化かしなんでしょう。化ければ勝てるというバランスを残しておかないといられないのかもしれない
M とすると狐や狸なら殴り殺しちまえとはならないんだね。日本人には。(狐や狸は)化けて出るぞって。猫は化けるけど、犬はこっちの味方だと思い込んでるのかな。そのあたりもいい加減だなあ。
A 狐や狸が日本には多かったんですかね?
M それもそうだろうし、ほんとに化かしたんだろうね。
A 化かす必要がなくなったんでしょう。別のなんかバランスを見つけたのかもしれない。
M 人間なんて相手にスンナってことかもしれない(笑)
A 昔は化ける必要があったんだね。
M そのバランスの錘を海外では宗教に一任してるのかもしれない。
A 聖書というあるストーリーに寄りかかるのが外国で、日本はちょっとづつのおいしいとこどり。だから化かしが必要なんでしょう。
M それだとそこそこ説明がつくかなあ。人間は面白いね。
A 日本人は集団で向き合うらしいんですよね。宗教も集団で。
M 歴史もあるでしょう。日本語以外喋らなくてもいいし、異人さんと共同生活を送らなくてもいいし。だけどね。そういう国はいっぱいあると思うんだけど、その中で日本は経済的に成功した理由はなんだろう?だって、株式ニュースみてるとドルとマルクはいいけど円は明らかにおかしいよ。
A 島国なんでしょう。
M だけどイギリスだって島国だし。
A そっか。

やはり二人は駄目人間である。この噺の結末なんか如実に著している。結論なんか出ないのだ。しかし物事に本当は結論なんて無い。我々は美意識に重きを置き、駄目人間という人間本来の姿を肯定しようとしているのである。それだけで充分!


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