第6日目(七月五日)

6:45AM 
車で焼津のイチョウ通りで下してもらい、歩いて駅に向かう。
いよいよ旅の始まりだ。ここから先が重要だ。
途中で焼津インターの表示を発見。ハイウエイバスと頭によぎる。
ローソンでヤムチャロウと日刊スポーツを購入。停留所を探す。
8:00AM
JR静岡駅に電話。
「停留所は焼津インターから名古屋よりに4KMです。」
と係員。ああ四キロね。・・・四キロ?
サンダルで痲酔は歩く事にした。なんかRPGみたいね。

右に高速、左に田園を見つめながら、一歩一歩汗を拭いながら、
踏みしめる足を見つめながら、静岡で過ごした8年間を思い出した。
私は誰も居ないのを良い事に大声で笑ったり、泣いたり、叫んだりした。
歩きながらどっぷりと自分の世界に身を置いていた。
きっと私が何ものかという事を静岡は知っていて、
でもそれを認めたくなくて、私は歩いてる気がした。
私は鬱積した10代を過ごした東京から、
静岡が救ってくれたなどという幻想を持っていたのかもね。
結局、静岡は私を許してはくれず、私は弾き出されたのかも。
静岡が私を二足歩行させてくれたのは事実だし、感謝してる。
未練はないけど、その恩に報いるべきだよね。何かしらの形で。
10時半頃到着。10分前に行ったばかりだったバスの野郎。
次のバスは1時間半後だ。周辺を散歩するかな。

 東名焼津西。着いた!

あれ?西焼津駅?そうここは鰻屋氏の家の近くだった。
無駄にぐるっと一周してきた様だ。ちょっと凹んだが、
まあこんなのも旅の醍醐味などと自分を叱咤激励して、
強がりに微笑んだ。行き当たりばったりだなあ。

12:00バスに乗る。東名焼津西、名古屋駅まで2500円。
席に着くと、きっと東京を朝一で出てきたであろうクラブ帰りの
お姉ちゃんたちに囲まれていた。皆爆睡。すげえ格好だなあ。
状況はまあご想像にお任せします。それにしても異様な空気だ。
浜名湖で休憩。鰻バウムとボスセブンをかう。ブルースハープ
押し売りされそうになったが、我慢した。(どうせ吹けないし)
バスに揺られながら、メールを打つ。吐きそうだ。
酔ったようなので少し寝る。

東名上郷で目を覚ました痲酔は
「名古屋駅に着いたら何しようかな」
と色々考えた。
とにかく風呂に入りたい。それしか思いつかなかった。
KAZU、U−ZANに到着を報告。
ヴィレッジバンガードでウインドウショッピング。品揃えは何処も一緒だなあ。
トイレで残金の確認。うん。大丈夫でしょう。
JR高島屋の展望台で景色を見る。散歩しながら、
格安チケット屋で航空券を手に入れる。
そこでついでに映画の券でも買おうかな。と思い、上映時刻をチェックする。
まず最初に見たかった映画は
ソフィアコッポラ初監督作品「ヴァージンスーサイズ」。
6人姉妹の集団自殺を扱ったものだ。とは知っていたので、見たかった。
残念ながら時間が合わず、
続いて「MIFUNE」。世界のミフネと自分を照らし合わせる男の話の
外国映画だと知っていたので、これも見たかったが、またも×。
結局良くわかんないけど毎日地下劇場で
オスカーを「アメリカンビューティ」と二分した「サイダーハウスルール」。
孤児院を舞台としたヒューマニズムだったが、
助演女優の駄目美人ぷりが笑えた。
林檎もぎのボスも自分の娘とSEXして、はらませ、
最後はその娘に刺され成仏。
孤児院のドクターもエーテル中毒でジャンキーだしいい感じだ。
でもやっぱりこんな一人旅の最中だから、
役に自分を照らし合わせたりしちゃった。
まあ泣いちゃったって事。恥かしくてはなずまりなふりした。
ちょっと残念だったのは
目の前の親父二人が席取った取らないで喧嘩してたと事と、
上映中に隣のおばさんが痲酔の手を握ってきた事。
おばさんも淋しかったのかな?
18:30ころ従兄弟と落ち合う。
ふたりで高島屋のレストラン街でナシゴレンを食う。
そこで従兄弟の嫁さんが今日正に誕生日だという事を聞く。
最悪だ。こんな時に来るこたねえよな痲酔も。
痲酔のセンスを駆使して、
このセンスない若者を助けてやる事にした(横柄)が
結局従兄弟が自分で決めてた。まあそれのがいいかな。
東苅谷の従兄弟の家まで行く。今考えれば恐怖の雪印の珈琲を買う。
嫁さんにはホントに良くしてもらった。何ていうのかなすっげえ感謝!
洗濯してくれるは歯ブラシくれるは風呂も借りれた。
「お風呂だあ。」
そういえば、風呂捜すの忘れてたっけ。
痲酔は疲れたので子供と一頻り遊んで床についた。
痲酔と同じ年なのに二人ともこんな立派な所に住み、
こんな可愛い子までいる。
ちなみに嫁さんは綺麗な人だった。
ちょっと緊張して全然喋れなかった。小心者だからね。