いい買い物

自分以外の人がどうかってのは実は全く知り得ないことではありますが
おいらの場合、調子に乗る事があまり許されてない存在の様です。
別に卑下してるわけじゃなくて、
基本的に調子に乗りまくり、
「あ!そろそろかな」
と思う頃に天罰のように何かが起こる。
もう30年近くも生きてるのでいいかげん
「あ!そろそろかな」
と自分で危険信号を察知して精神に支障はきたさない様に心がけられるので
最近はまだましですが、今よりも若い頃は
その察知能力も養われてませんから、
「何でこううまくいかないのか」
と苛々する始末。まあうまくいかないのが人生とは
思いつつもついつい自分だけがうまくいかないとか
自己中心的なモノの捉え方になってしまっていました。
そんなときはいつでも。
余裕がないですからね。ついつい。

でもそんなときおいらよりずっと先に危険信号、
いやその合図こそ既に爆弾だったのかもしれませんが
そういったものを事前に落としてくれる女性がいらっさいました。かつて

その女性と来たら、ただ教えてくれるなら
「とても親切ないいおばさん」
となるのですが、如何せんおいらが凹むまで
その危機感を植え付ける。
まだ何も巻き起こってない内に
「あんた最近おかしいんじゃないの?」
何て言われちゃう。言われた方はたまったもんじゃないし、
まだガキだから、反発もする。苛つく。
しょうがなく鬱積して、反省して、罪悪感を抱えながら、
またやってくる調子に乗る日まで、報われなさパワーを蓄積するんですね。

徐々に大人になってきて、なんとはなしに
自分の異変というか、調子にのりっぷりに、
疑問を持ち始めるようになってから
「あ、またあの人に言われる・・・」
ってのが先回りで分かるようになったんですが、
それでも人間ですから調子よく回り始めた歯車を
留める事なんて出来ない。
頭で分かっていても、体が止まらない。
で、やっぱり雷を落とされる。

だけど今考えると実はニュートラルにもどしてくれていたのかもな
とか思うのです。
調子にのっていくとやがて段々厭な奴というか
悪ふざけというか、自己中心度アップというか
その類の雰囲気になっていく、
で、段々と社会との調和がとりずらくなり
暴走気味になっていく可能性もある。
以前ここに書きましたが事実幼少期のおいらは間違いなく暴走小僧だった。
そいつを抑制し、バランスを保たせる。
ニュートラルな判断基準のある状態に戻してくれていたのかもしれない。
だって、彼女に諭されて(そんな悠長な感じではなかったけど)
反発して、大喧嘩になって、でもその後スッキリしてる自分がいたように思うのです。
ああ、何かに怯えていたんだな。って感じで。
自分では調子に乗ってきたつもりでも
地に足がついてない、もしくは地から今にもふわりと浮いてしまう様な仕草が
彼女の目にはがつっと見えていたのですね。
おそらく。

痲酔は18歳から26歳まで静岡におりました。
大學に在籍、無事四年で卒業。
某産業廃棄物系の企業に就職。
ひき逃げにあい、3ヶ月の入院生活を経て半年で解雇。
その後浮浪者になり、劇団を旗揚げ。
駄菓子屋に就職。退職
とそんな具合に過ごしていたのですが、
その間は色々な方々に助けられていたのですが、
事前に危険信号を与えてくれる人はやはりいませんでした。
当然ですわな。世の中そんなに甘くない。
後になって、もしくはその渦中に
「気がついてたけどいえなくてさ」
的に教えてくれたりね。でももう遅くてね。
取り返しがつかなかったりして。
それで良かったとは思いますけども。
そのお陰で少しずつ自分でも気がつくようになってきましたから。
みんなが気がつく前に、事が起きる前にね。
だからまあ事なきを得て今健康で楽しく生きてるわけですから。

彼女は一昨年の11月1日に命を引き取りました
3月1日は彼女の月命日で、墓参りに行ってきました。兄弟3人で。
墓地は神奈川県の三崎というところにあって
自動車を飛ばしましてね。
雨が降るかも知れないから早く行かなくちゃ。
横浜通るからクレージーケンバンドのCD何か聞きながらね。
兄弟は朝帰りのまま連れて来ちゃったから
すやすや眠ってる。
気をつけて安全運転で、なんて思ってたのは横浜過ぎるまで、
横横道路に入ったら、ふっとノスタルジックなね
そんな感じでふっと記憶の捏造やら妄想やら
始まって、彼女とのやりとりとかプレイとか
そんなのがぐるんぐるん。
そんな時に限って、道は偉いこと空いてるわけでして。
山に囲まれた横横の道にサイレンが木霊する。
「トラックの運転手さん止まりなさい」
え?トラック?どこにトラックが・・・・
というおいらの頭上のクエスチョンマークに対し
お前だよ。しかもトラックじゃなくてプラッツだよ。
「ああ・・・そういうことか」
何だか凄く可笑しくて、
「調子に乗ってんじゃないよ」
ってな彼女の声が振りはじめた雨と共に
横須賀の空から注いできているようで御座いやした
あんまりおいらがにやにやしてるので
お巡りさんもも気味悪がってましたね(笑)
スキャンダラスな神奈川県警の皆さん、
この気味悪い男の18000円
気味の悪い事件の解決に役立ててくださいね
なんて皮肉の一つを言う余裕すらないほど、
照れ笑いを浮かべちゃいました。
気付いてましたけどね。やっちゃいましたよ。
と空に呟くおいら・・・

墓地のある寺院に到着すると雨はやんでいました。
はいはい。分かってますよ。空に返事する痲酔。
必死に墓を磨き、仏花添えて、線香に火をつけてね。
墓石に向かって
「ありがとうございました。勉強になります」

あれから一年半ほど経ちましたが、
それからの痲酔はやはり一寸ぎこちなくて
もう自分一人で大丈夫な感じを手に入れたようで
まだまだ修行不足でね。
なるほどこんな形でね。まだまだな所を教えてくれるんだな。みたいな。

でもね。おいらはもう苛々もしないし凹みもしない
そのことに関してはね。
ちょっと嬉しいぐらいですよ。
一大事になる前に教えてくれたと思えばね
18000円と減点3なんぞ安いものですわ。

帰りは豪雨。制限速度をしっかり守る小心者の痲酔。そうこれでいい。

これからも宜しくお願いいたします母上様。

とまあんなわけで失礼します。