バニラスカイ

バニラ・スカイ スペシャル・コレクターズ・エディション [DVD]
筆者は色覚異常者である。“色盲”という先天性の障碍がある。
筆者は東京下町生まれである。時代が時代なら江戸っ子…いや下町(まち)っ子。

ガキの頃から、故郷の天(そら)はくすんでいた。
どことなくドンヨリとして、スッキリしない気候。
予報は“快晴”と謳っていても、抜けるような天は記憶にない。
下町のゴミゴミした路地裏で、ビルの隙間から垣間見える空は“青天井”等とは
呼べたものではない。灰色に青みがかった空だった。不健康な緑に見えた日もあったな。
実際健常者にどう見えるか分からない。たぶん違う見え方をするんだろう。
その天の表情の中でも“お気に入り”で、ブックマークに登録したいほどの日よりがあり、
いつしかそこにリンクしたいと願ったものだ。
更に結膜炎持ちの筆者だからなのか、それとも気分の高揚により脳内が映し出した世界か、
光化学スモッグの乱反射が産んだものなのか…天空は赤く染まっていた。
紅ではない。どちらかと言えば“朱色”。そんな風に筆者には映った。

閉鎖され、狭い了見のガキの頃、大切にしていた隙間から覗く天に心躍らせていたのは
恐らく現在よりも“世間識らず”で、
多少のことで傷つき涙で目を腫らせていただったからなのかもしれない。
きっと世界は広い。ガキの想像を絶する世界が“花の銀座”の向こう、
皇居の向こうには犇めいているはずだ。向こうは空も違うものになってるかもしれない。
モラトリアムの象徴としての空。朱色の天。朱に交われば赤くなり、
其れ以外はくすんで見えたあのころ…少しは世間を識った今、結膜炎は治ったが、色盲は治らない。

本作はそんなガキの頃を思い出す。いや鑑賞る前から先入観を憶え、
やはり同じ事をタイトルロール後も思っている。

筆者に色を識別する能力があったなら、世は別のものかもしれない。
世間識らずが少し識った世間は別の色かもしれない。でもその世界は良い所じゃないかも知れない。
http://www.uipjapan.com/vanillasky/flash/index.htm