水の女

わたしは雨が好きである
氷雨よりも暖かい雨が好きだ。
だって何か包まれているように感じられるから。
そもそも水が好きなのかもしれない
何しろ風呂好きだ。
湿度の高い室内も好きで
夏場でも窓なんか開けて眠らない
必要以上に汗かきという体質も重なって
恐ろしいほどの湿度をかもしだす室内でびっしょりの中で
起きるのは心地よい。
わたしは恥ずかしながら夜尿症であった
もちろんガキの頃の噺だが、二桁に年齢が達する時でさえ
ごくたまにやっていた
これとて現在思い返してみると、その快感の一種であるように
思う。匂いはともかく暖かい水に肢体が曝されることに
快感を覚えるようだ。
わたしの理想としては
湿度は高く、微かな光さえも遮断した闇、バケツをひっくり返したような雨
己の肉体の穴という穴から流れ出る液体
地面は深い塩分濃度の高い、暖かな海
そんな中で出来ることなら煙草をふかして暮らしたい。
ちょうど何と言うかなあわたしのイメージでは体内や
胎内なんかがそんな感じだ。

さて余談が長くなったが、「水の女」をDVDで観た
率直に言うなればこういう映画こそ映画館で観たいなあと思う。
ストーリーが少ないので状況に没頭したいのである。
最近観た「1980」や「コンセント」「猟奇的な彼女」などは
ストーリーが興味深い作品で、ストーリーを追うことによって
家庭で鑑賞しても入り込みやすい。
家では煙草も吸えるし、呑めるし食えるし、家族と喋ったり
途中でトイレに行ったり、明るくして観たり出来るためか
なかなか集中できない。
「んなことはないよ」
という方もいらっしゃるだろうが、こちとらそれほど環境もよくないし
自堕落な性格だ。困ったものだと思うがこれもまた仕方あるまい。
そこいくと映画館はいい。
本来わたしはストーリーが少ない映画が好きだ
いかようにも此方の解釈でコントロールできて
その時の精神状態、年齢、体力ありとあらゆる現在の己の状態が映し出される。
同じ作品を見ても時期により内容に変化が見えたりするのが堪らない。
だから変な論理的な分解はあまり好みとは云えない
生理的に感じ取りたいたちなのである。
そう言う意味に置いて作品鑑賞という視点からどうこうという意味や
作品として好きであるという以前に本作は
生理的に受け付ける作品の一つということになる。
絵を愉しむというかそんな感じだ。
この手は邦画では少ないように思う。
しかも銭湯に雨に火に男と女・・・もえないはずもない。
奥行きは各鑑賞者が決めればいい・・・
いや各時期のわたし自身が決めればいい
asin:B00008XWUX