Stepsミュージカル「boy be...」 本多劇場にて その2

さて続き。
最愛の息子を亡くした科学者とそのことで深く心に傷を負ってしまったその妻。
科学者憂い、かつてよりの研究テーマであった人型ロボットを完成させる。
息子の変わりと言ってはなんだがといった感じであろうか。
しかしそのロボット、あまりの精巧な出来に役人・軍人他お偉いに目を付けられる。
さあさあ、困った博士、まんまとロボット、アンドロイドを逃がす。
捉えられる博士。
さてアンドロイドはBeと名付けられ、逃走の旅に出る。
まず辿り着いたのはゴミ捨て場。そこには沢山の役目を終えた機械が
粗大ゴミという名に変化し、存在する。
彼らには彼らの役目があったから、人間に作られた以上何か役目があり、
それを果たせなくなった現在が現状であるとBeに伝え
しからば、Beの役目はなんなのだと逆に問うとまあそうなる。
さあさいっちょまえにロボ公、葛藤やら苦悩やらに身を沈める
存在意義であろう。何のために私は生まれてきたのか?である。
其処へご登場の奇術師。如何にもインチキ臭いが
其処はロボ公、さっさと丸め込まれ、一座へと組み込まれる。
しかも存在意義という大きな悩みがあるから、
求められれば、おいそれとなるとそういうことだろう。
しかしロボ公は政府の指名手配犯だから、あっさりと捕まる。
捕まるも何も、ロボ公を取り締まる法律なんぞ無いから
回収されるという表現の方が合っている。
奇術師は豚箱行き。
ロボ公は続いて試験的にとある高級軍人宅に引き取られる。
美人三姉妹が住むこのご邸宅にて、モニターしようとそういう案配だ。
三姉妹の内、三女は俗に言う引き籠もりとでも言った方がいいか
そんな状態で、家族親類縁者ともども困り果てている。
三女が唯一心を開く祖母は、若干老人性痴呆症を呈しているかの如くで
かのじょにも困っているから、更に困り果てている案配で・・・
判りにくいな。
そんな中予定通りと言っちゃあ何だがロボ公様の登場と相成る。
三人娘色々思春期の問題を抱えながらも、ロボ公ともども解決するのだ。
そんなロボ公の悩み。思春期の歯痒い切ない苦悩とあいまじり
存在意義が錯綜するってもんだ。
長女は男が出来、ガキが出来、次女は定番の女優になりたいなどと
抜かし、三女が解決すりゃこんな有様だ。と親父はいい加減怒るわな。
でもまあ許したり、そこは親だから子供は可愛いって事で。
そんな中、軍人である父に赤紙だ。
戦争だから、物語上というかそうした方がいいという理由だろうが
こういう時決まって、戦死の通知。落胆する家族。
しかしロボ公はそんなことは信じない。良い了見だ。
自分で見ない内は認めないたあ、ロボットにしとくのは勿体ない野次馬根性だ。
で現地露西亜へ。其処には以前にロボ公を科学者宅から連れ去ろうとした軍人が居て
親父を「名誉の戦死」という筋書きのドラマを演出していた。
つまり処刑して、戦争だからしょうがない御国のためにというお題目で葬ろうという魂胆だ。
ロボ公もういい加減人が死ぬのは見たくねえんだ。
科学者は目の前で殺されたし、その妻は狂って病死、やっと安住に
辿り着いたのに、親父も殺されたのではたまらない。
助けろ、死ぬな、殺すなでなんと親父を連れ帰る。
年月が経て、寿命という生命だけが許された安住の世界へ
祖母、親父、お袋と順番に旅立つご邸宅。
さてはてロボ公、なんであたしにゃその安住を与えられねえんだ?
存在意義について悩んでいた彼が、ついぞやそこまで辿り着く
生の意義を問うてた彼が、死を意識したのである。
生とはなんじゃいなから死とはなんじゃいなに見事シフトチェンジした。
社会に入る前に社会に出るのは怖いと思っていた学生が
ある程度社会に染まっていくと、其処から見捨てられるのが怖くなるのに似ている。
ついには随分年月が経った。駆け足で生きてきたロボ公も100歳を迎えた。
更にどういうわけか名誉市民という勲章まで与えられた。
不老不死という人間の夢を一手に背負った人生いやロボ生が
いよいよ終了となる。
ロボ公立派に死にてえのだ。彼なりのロボ生を全うするには
最高の引き際というか、死に様まできちんとプロデュースしなくちゃなるまい。
だけどまあ、自殺てな趣味じゃないし、もし良かったら電源落としておくんなまし人間様てなもんである。
其処はロボットを名誉市民に担ぎ上げた、我が儘だが粋な人間、当然願いを叶えてやる。
とまあそんな噺だった。
ずらずら書いたけども、中にわたしなりの解釈がふんだんに介入していることを許して欲しいです。
どうもこの噺ロボットという特殊な境遇のモノを対象としているが
実際生きるてな・・・死ぬってなという極有り触れた一般的な噺に見える。
どんなに頑張っても人間は生きるし、例外なく死ぬのだろう。
そしてその生まれるという状況に対して全て特殊な境遇が存在する。
己の人生にとって己は常に主人公であろうし。
それが人間の不完全な所以なのかも知れないけども。
しかしその不完全をロボットに多大に求めているとしたら・・・
一体何のための機械なのか?文明なのか?
文明とは一体なんなのだろう?