ドッグヴィル

ドッグヴィル プレミアム・エディション [DVD]
朝起きて何となく映画館に行きたいなと思っていたら、
ふと目に飛び込んできたTVだったか、雑誌だったか、
インターネットだったか、が「ドッグヴィル」という映画の映像だった。
別段さほど以前からチェックして気になっていた映画ではなかったけれど
この瞬間は今日中にこの映画を体験しなくてはと誓っていた。
時々こんなことがある。
わたしは常々この日記でも書いているとおり、
あまり先入観というものが好きでないらしい。
人間だから当然先入観や思いこみというものを持つのだろうけど
その類を嫌悪し、持ってない振りをする。もちろん自分に対してだ。
別に意識的にそうしてるわけではないが、
「括られること」が好きでないらしい。
だから相手にも其れを望まない。ということなのだろう。
さて早速時間が空いたので、渋谷と日比谷で公開初日の劇場に足を運んだ。
山手線で云えば右側好きだし、土曜日のシネマライズの所在するスペイン坂なんぞ
ごみごみしていて行きたくないので、
まあ当然日比谷ですわな。
ちなみに云うとあの日比谷の映画館通りは好きである。
帝国ホテルを真っ正面に構え、シャンテの手前のシャンテシネには
ゴジラの銅像があり、スターバックスの向こうに
スカラ座と数軒劇場が軒を連ね、タリーズ珈琲までの間、
本題とずれてるな・・・まあいいか。
其処には浮世絵博物館があるし・・・やっぱり辞めた
街の紹介は別の機会に・・・
さてドッグヴィル
かのダンサーインザダークの監督でラース氏はかのビョークと揉めたらしい
どちらかと言えばわたしは好きな監督さんである。
いやこの場合彼の作品が好きであると言った方がよいか。
まあこの手のエピソードは専門誌とかメディアで唸るほど書いてあるから此処で紹介することもない。
主演はニコールキッドマン嬢。いやはや痲酔ニコール嬢大好きなのです。
あういう美女はいいなあ。昨今活動の幅が凄いなんぞと云われてるが
そんなことよりあのヴィジュアルが大好きだ。
なんというかもうそれだけで充分である。
まあそれもどうでもいいか。
じゃあ何がどうでも良くないのかね?
判らない。
確かに私はこの日記で判断基準を持つことを薦めている。
だからラース氏はかなり真っ当であろうし、そこら辺が気に入っているということ
は大切なことなのかもしれない。
しかしなんかそんなことはどうでもいいんだよなあ。この度は。
単に生理的にオッケーだったということなのだろうけど
わたしはこの話好きじゃない。
映像は何というか旨く説明は出来ないし、する気もないけども
好きである。それだけなんだろう。たぶん・・・あんまり自信がない。
街の名前も好きだし、描かれている本題も好きだし、
絵がたまらないし・・・
ラストシーンについてどうもそこかしこ津々浦々
「爽快だ」
とか、色々論じられているけども、わたしはあれ好きじゃない。
つまり纏め方というか構成が好きじゃない。
ラストシーンより前までのシーンでニコール嬢が耐えてきたのは
ラストシーンで寛容である己に酔っている、高慢であるという性格から
来るものであるとされている。
わたしはこんなことをされても腹が立たない懐の大きい寛容な自分に
酔っている人を私もよく見かける。
「人間とは業深いものなのだから、間違う。だから其れを許せるわたしは偉い」
とでも云わんばかりの人に遭遇する。
確かに現代において自分の趣向と合わない人を否定するやり方は
派手で目立つかも知れないが、あまり頭のいいやり方ではないのかもしれない。
単に怒りをぶつけるだけではなんの解決にもならない例は幾例もあげることが可能であろう。
しかし
人間が本当に業深いならば、それらを許容できるのは人間あるまじき行為とは云えないだろうか?
とか思ってしまう。
だから、ニコール嬢は最早人間ではなくなり、人間として扱われなくなっていた。
衝撃?と言われるラストシーンで当然人間を取り戻し・・・となったわけだが
なんという独り相撲なのだろうか?
耐え難きを耐え、忍び難きを忍んで、反論を呑み込み、
我慢し続けた結果、返って非道い言い方になってしまうのと似ている。
やられたらやりかえす某国を描いたという監督。
確かにそうだ。
それを爽快と言って良いものか?
ダンサーインザダークのラストシーンは凄かった。
あんなに涙したことはなかった。
しかし本作ではわたしは苛立った。
もしかしたら行ったこともない国への風刺だとするラース監督は
其れを目的としたのかもしれない。
奉仕という姿勢が人を救い、愛が地球を救うというのであれば
きっとこの世にはそれらが溢れかえっても不思議はないのに
方々で陣地争いやら、欲望の渦やらが消えることはない人類。
小さな村社会の閉鎖的なノリで世界を治めようとしてしまう人々。
それらを揶揄した作品ではなかろうかね?違うかなあ・・・
実際自信なんかない。わたしもその社会の恩恵を多大に受ける現代人だ。
人間は業深い生き物であるという私自身信じる考えは諸刃の剣だ
それを多大に受諾すれば、我が身が危うく成りかねない。
他人の業を許せば、此方の業が機能しない恐れは多分にあり
だからこちとらも当然業深くとなりそれが拡大していって・・・
結局それらに警鐘を与えることなどできないから揶揄しようとなってしまう。
揶揄で終わればいいけど、ラストシーンが爽快に見えるのだから
そういうわけではないのではないだろうか・・・
まあ其処まで極論を云う必要もないか・・・
っていうかおいらがそんな事言う筋合いはないけどね。
わたしはあの映像好きだ。それでいいや。

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